『アキハバラ電脳組』のリテイクチェック情報

まず『アキハバラ電脳組』という作品をご存知でしょうか？
これは、98.04.04〜98.09.26にTBS系で土曜日17:00〜17:30に放送されたアニメ番組です。
作品自体はかなり面白いのですが、本放送時はそれとは全く別のことでも話題になってしまいました。
それは、作品の評価云々以前に作画が破綻している回が非常に多いということです。
これで見るのを止めたという人もたくさんいたほどです（まあそういう人は、ラストの盛り上がりを見て悔しがるわけですが）。
本放送時は、いわゆるアニメバブルに端を発した人材不足により、慢性的なスケジュールの乱れが発生していた時期であり、『アキハバラ電脳組』はこの影響をまともに受けてしまいました。
頻発する海外発注のため、例えば基本的なデッサンが変だったり、キャラの顔が歪んでいたり、身長の対比が滅茶苦茶だったり、色の塗り間違いがあったり、描き忘れがあったり、動きが変だったり、作画的に前後が矛盾していたり・・・とにかく酷いものでした。
この時期の他のアニメでも、作画が破綻している状況は同じでしたが、『アキハバラ電脳組』の場合はそれがあまりにも酷く、その酷さ故にビデオ＆LD＆DVDでは大幅に修正されたリテイク版としてリリースされました。
また、TBSの再放送・キッズステーション・BS-iでは、本放送版ではなくリテイク版が放送されました。

本放送版とリテイク版の比較画像

	本放送版	リテイク版
	備考
描き直し（1）	[1]	[13]
描き直し（2）	[2]	[14]
描き直し（3）	[3]	[15]
描き直し（4）	[4]	[16]
描き直し（5）	[5]	[17]
作画上のミス（1）	[6]	[18]
	他のシーンでは全て半袖なんですけど、本放送版ではこのシーンだけ何故か長袖でした。
作画上のミス（2）	[7]	[19]
	振り下ろされた剣をアフロディーテが受け止める・・・はずなんですが、本放送版では受け止める直前で止まっています。でも受け止める効果音は入っている・・・。
色の塗り間違い ＋描き忘れ	[8]	[20]
	つばめの制服の色とひばりの制服の襟の色を間違えていて、更につばめの耳飾りを描き忘れています。
矛盾点の修正	[9]	[21]
	前後のシーンとの関係から、つぐみは左手に飲み物を持っていないといけないのに、本放送版では右手に持っていました。
彩色の変更	[10]	[22]
	本放送版では、全体的に薄い色が使用されていました。
一部の修正	[11]	[23]
	本放送版で髪にハイライトが入っていなかったシーンは、全てハイライトが入れられています。
背景のみ変更	[12]	[24]
	イマイチな（？）背景は、結構変更されています。

どうしてこのような事態になったのか、そしてリテイク版へ・・・

このような事態に陥った原因を知りたいところですが、『アキハバラ電脳組』を制作した葦プロダクションからの正式な発表がないので、実は正確なところは分かっていません。
自社にとって都合が悪いことを積極的に公開するわけがないので、ある意味当然のことかもしれませんが・・・。
『ロスト・ユニバース』4話の騒動の時は、監督自らが自分のホームページで事情説明を行いましたが、これは個人だからできたことであって、極めて稀な例だと思います。
ただ葦プロダクションからの発表がないといっても、ネット上では『アキハバラ電脳組』関係者のコメントが流れており、そこからこの事態の原因が明らかになりました。
それによると、葦プロダクションの上層部が、元々できるわけがない無理なスケジュールで仕事を受けたために、自己破綻を招いてしまったというのが真相のようです。
スタッフの確保やスケジュールの管理がきちんとできていなかった葦プロダクションの、会社としての責任は重大です。
また外部発注により何とかしようとしても、アニメバブルに端を発した人材不足により満足な協力先が得られず、結果として海外スタジオに丸投げしてしまうことが多々あるなど、どうしようもない状態が続いていたことは、海外スタッフの名前が大半を占めていたEDのクレジットからも明らかです。
作画監督としてクレジットされていた人達も、慢性的なスケジュールの乱れにより実際は作画監督の仕事をやらせてもらえない状態だったそうです（おまけに、11話は作画監督が存在しない）。
このような事情により、作画が破綻した話数が続いたわけです。
ただ21話以降は、現場スタッフによる大幅なテコ入れが行われ、通常ではあり得ないような強力なスタッフが参加したため、作画はかなり持ち直しました（作画スタッフ以外にも、豪華なメンバーが揃っています）。

そしてリテイク版です。
リテイク版は、基本的には本放送版に何らかの手を加えたもので、細かなミスを修正しただけの話数もあれば、本放送版を大幅に描き直し、ほとんど別物になっている話数もあります。
いずれにしても、本放送版の様々なミスはほとんど修正されており、リテイク版からは、本放送版の姿を垣間見ることはできません。
それと、TBS関係者の公式な発言により、TBSが所有していた本放送版のマスターテープは既に廃棄され、リテイク版に差し替えられていることが明らかになっています。
TBSの再放送や、遅れて放送を開始したキッズステーションではリテイク版が放送されたことからも、これは明らかです。
本放送当時のアニメ雑誌やLDライナー・ジャケットには、本放送版の絵がいくつか載っているので、本放送版を見たことがない人は、これで確認することができます。
さて、リテイクによりクオリティアップした『アキハバラ電脳組』ですが、結局は、最初からリテイク版と同じレベルのものができていれば、余計な費用もかからず何の問題もなかったのでは、という永遠の疑問は残りますね・・・。
そして、リテイク版の制作費を一体どこが出しているのか、という疑問も。

どれだけのバージョンがあるのか

『アキハバラ電脳組』は、本放送が終わった後も様々なメディアで展開しました。
ビデオ＆LDが発売された後、CS放送のキッズステーションで放送され、更にDVDも発売されました。
それぞれの展開時期が、ビデオ＆LDは1998年12月〜1999年6月、キッズステーションは1999年7月〜2000年1月、DVDは1999年10月〜2000年3月と違うため、それ故にリテイク版は複数存在するのです。
ここでは、それぞれのバージョンの違いを挙げておきます。

○本放送版
最初にTBS系で放送されたものです。
遅れて放送を開始したTBS系の地方局でも、このバージョンが使われました。

○リテイク版（ビデオ＆LD）