『鎧伝サムライトルーパー』第17話の二重放映事件

『鎧伝サムライトルーパー』とは？

『鎧伝サムライトルーパー』は、テレビ朝日（名古屋テレビ製作）系で88.04.30〜89.03.04の毎週土曜日17:30〜18:00に放送された全39話の作品です。
当時は『聖闘士星矢』などを始めとする“バトルプロテクター”ブームが起きており、『鎧伝サムライトルーパー』もそれを意識した作りになっています。
元々は小中学生の男子をターゲットにした作品だったのですが、この作品の主役5人を演じていた声優5人（草尾　毅・竹村　拓・中村大樹・佐々木　望・西村智博）が10〜20歳代の女性の絶大な人気を集め、この5人が結成したグループ“NG5”が大ブレイクして当時の声優ブームを作り上げるなど、1980年代最後の大人気アニメとなりました。

第17話の二重放映事件とは？

4月30日にスタートして何の問題もなく放映が進んでいた『鎧伝サムライトルーパー』ですが、9月3日放映分で、前代未聞の珍事を起こしてしまいました。
それが、既に放映した話数をダブって再度放映してしまうという二重放映事件です。
9月3日に放映する予定だったのは18話“恐怖の妖邪帝王”なのですが、8月27日に放映済みの17話“明かされた鎧伝説”を誤って再度9月3日にも放映してしまったのです。

ここでまず、大阪の朝日放送のローカル編成事情について説明しておかなければいけません。
朝日放送では当時、刑事ドラマ『部長刑事』を関西ローカルで19:30〜20:00に放送していた（その後『部長刑事シリーズ』として18:30〜19:00に放送枠移動、現在は放送終了）ため、この時間に全国ネットで放送していたアニメ『鉄拳チンミ』を、全国ネットよりも早い土曜日17:55〜18:25に放送していました（18:25からは全国ネットの別番組がある関係で18:00〜18:30には放映できないため、5分前倒しして17:55から放送する形になっていた）。
ところが17:30〜18:00は、全国ネットでは『鎧伝サムライトルーパー』を放映している時間です。
仕方なく、朝日放送では『鎧伝サムライトルーパー』を金曜日17:00〜17:30に放映していたわけです。
ここで問題なのが、本来の全国ネットの時間以外に放映する場合、普通は週遅れで放送するものですが、朝日放送の場合は金曜日の放映だといっても1週間遅れているわけではなくて、何と全国ネットよりも1日早い放映なのですね。
そのため、『鎧伝サムライトルーパー』の送出局である名古屋テレビは、全国ネットの土曜日だけでなく、朝日放送向けに金曜日にも『鎧伝サムライトルーパー』を番組ネット回線に流す必要があったわけです。

それでは、何故二重放映事件が起こったのか？
前述の通り朝日放送だけは放映日時が違うため、全国ネットでの18話の放映日である9月3日より1日早い9月2日に、番組ネット回線経由で名古屋テレビから朝日放送向けに18話が送出され、朝日放送では無事に18話が放送されました。
そしてその18話のテープは、本来であればそのまま9月3日の全国ネットでの放映に使用する予定になっていました。
ところが朝日放送向けの送出が終わった後、名古屋テレビの技術担当者が勘違いして、18話のテープを返却棚に戻してしまったのです。
そしてテレビ朝日系12局の全国ネットで18話が放映される9月3日の当日、9月3日放映用の準備棚に、既に8月27日に放映済みの17話のテープがたまたま返却されずに残っていたため、これを担当者が18話のテープと勘違いしてしまい、そのまま誤って17話のテープを放映してしまったのです。
名古屋テレビでは、系列局からの問い合わせによりAパートの途中でミスに気付いたようですが、本来の18話のテープと差し替えるのが難しい上、全国ネットの番組を途中で中断させるわけにもいかないため、やむを得ずBパートで2回ほどお詫びのテロップを出して、そのまま最後まで放送しました。
番組製作局＆送出局の名古屋テレビやキー局のテレビ朝日には、番組開始直後から苦情や問い合わせの電話が掛かり始め、テレビ朝日だけで約180件、名古屋テレビにも約150件の電話が掛かってきたそうです。
この日に放映予定だった18話は翌週の9月10日に放映されましたが、この二重放映事件の影響を受けて、本来は全40話の予定だったのが1話短縮されて全39話になってしまいました。
ちなみに、9月10日放映の18話のOP前に以下のようなフリップを出して、女性アナウンサーがお詫びのアナウンスをしていました。

[1]

【トップページ】へ戻る